自分に合っていた、
栄養士という仕事。

有限会社あすなろフード

南澤 絵梨

平成23年度新卒採用 勤務年数12年目 ※令和4年現在

私は現在主に警察学校の食堂で、献立表・指示表(調理員さんへ、この献立を何人分作ってください というのを示した表)を作成するお仕事をしています。私の働いている警察学校では、一食あたり平均二百人分もの食事を作っているため、下処理や盛り付けなどのお手伝いも行っています。

 

献立を立てると言っても、一人で自由に決めているわけではありません。まず、警察学校の給食担当の方と毎月に行われる給食会議で、一ヵ月のメニュー予定表を出します。その一か月の予定表にOKがもらえたら、一週間の細かい予定表にしていきます。加えて、警察学校との契約で、基本は毎日二千五百キロカロリー以上摂らせることが決められています。

仕事の中で一番大変なことは、「一人ひとりの好みがあること」です。警察学校では一週間に一回、給食に関するアンケートを行っています。

 

すると、「コーンは嫌いだからいらない」「朝パン食の日を増やしてほしい」「麺の時はご飯を付けてください」「炭水化物と炭水化物の組み合わせはやめてください」など…二百人もいたらキリがありません。また、パン食はお金がかかりますが、これまで要望に合わせて何度か増やしてきています。しかし、生徒さんは毎年卒業され、入れ替わります。新しく入った生徒さんは以前の給食事情を知らないため、「(パン食を)増やしてほしい」という声はなくなりません。

金額的に難しいことや、定められた一日のエネルギー数を下回ってしまう要望には やはり答えることができません。そのため、「聞ける要望があったら聞く」というスタンスでメニューを考えています。

 

一番嬉しいのは残飯数が減ることです。基本は事務室にいるため、生徒さんと直接お話する機会が少なく、なかなか「おいしかったです」という言葉を聞くことがありません。そのため、給食が美味しかったかどうかを知るのには残飯数が指標になります。

メニュー表に、アンケートで出た 例のコーンや好評だったもの(トロロ)、
また出してほしいと言われたもの(梅びしお)のメモを
書いて、今後のメニューに活かす。

就活の時は、夢が無く何がしたいかが分かりませんでした。会社を選ぶ際も、どこの会社に入ってもやることは同じかなと思っていたため、正直どこでも良かったです。しかし実際に働いてみると、考えが変化することもありました。

今現在、就活の時に受けた食品関係の会社さんと取引を行っています。今だから思っていることですが、その会社には受かっていても行ってなかったかもしれません。実際に取引する中で見えるその会社に、栄養士の仕事の存在が見えないためです。

 

大手の会社は、管理栄養士さんの下に栄養士さんがたくさんいらっしゃる形なので、何か仕事で悩みがあれば他の栄養士さんに相談できたかもしれません。しかし、私はどちらかと言うと個人でやりたいという性格です。また、現在私はフレックスタイム制で働いています。日曜日は少し遅くまで仕事をしたから月曜日の朝少しずらして一か月で帳尻を合わせようかなど、一人だからこそ自分の好きなやり方で働いていけるということは、自分に合っていました。

ですがそれは、やってみないと分からなかった。振り返ってみた時に、「自分に合っていた」と気づきました。もちろん最初は慣れなかったけれど、あすなろフードに入社をして後悔はありません。

普段過ごしている事務室。奥の本棚には沢山の
料理本が。

これまで溜めてきたメニュー表。

栄養士を目指される方へ向けてのメッセージとしては、「メニュー表を立てること」「パソコンの勉強は役に立つ」ということはお伝えしておきたいです。

食は三六五日三食あるものです。だから一食と言わず一週間、一週間と言わず一ヵ月、一年間…頑張って立ててください。一年分を立てておくと、会社に入って栄養士として働く中で、いつか「一週間の献立を立ててみて」と言われた時に、役に立ちます。その経験があるのとないのとでは大違いです。

 

実際に私は、会社に入社してから献立を考えるのに苦労しました。そんな中でも何とかなっていたのには、パソコンの存在がありました。入社後最初の職場で、パソコン操作が苦手だった管理栄養士さんの代わりにパソコンを使って作業をしていました。その時に、管理栄養士さんが作成されたメニューを印刷し、紙媒体にして保管していました。

いざ自分が献立を立てることになった時に、この時保管しておいたメニューがとても役に立ちました。このことから、パソコンを勉強してスキルを身につけておくこと、また、メニュー表を立てておくことの重要性を感じました。いらない勉強や資格、経験はほとんどありません。なにごとも「なるようになる」「何事もやった方がいい」という姿勢で、どんどん色々なことに前向きにチャレンジしていってください。